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富士宮美容室のベンチマークの誕生から現在までのお話、「benchmark物語(ベンチマーク物語)」のタイトル画像

第1話 再デビュー案


 
『わたし、いつまでこのお店に来ていいのかな... 』
 
衝撃的なそんな一言を、当時、僕が担当するご常連さんが呟いた。
心にぐさっと刺さる、そして抉られるそんな一言でbenchmark (ベンチマーク) は、始まったのである。
 
当時、チームを最高にするべく毎日毎日全力で走っていた。
スタッフがいきいきすれば、チームは最高になり最強となる。
 
そう思っていた。。。
 
いきいきしてもらうために、自分なりに考えられること全てを実行できるように頑張っていた。
 
しかし、数年ほど前から違和感を感じ始める。
それは、経営者的思考と美容師としてのワクワク感。
 
チームを追い求めれば追い求めるほど、組織の長 経営者 マネージャー オーナー 代表... であればあるほど、プレイヤーとしてのワクワク感からは距離を置くようになってしまっていた。
 
というか、置かざるおえないシチュエーションだ。
 
とてもモヤモヤしていた。
 
元々、美容でいうアートが好きでこの世界の門を叩いた。
ヘアーという世界に取り憑かれた。
毎朝毎晩、トレーニングに明け暮れた。
本来、器用な人間ではないため、何倍も何十倍もトレーニングを積んだ。
 
みるみる仕事が好きになり、仕事というより趣味の領域になった。
 
年相応になり、自分の城を持ちたくなった。
昔は経験値が増えて自信もついてくると、自分のお店を持つのが自然な流れだ。
 
単純に言うと、お店を出せば儲かるという浅はかな、そして甘い深えも心の奥底に置かれていて、ただただそこに向かって準備をしていた。
 
ちなみに今の時代は、お店を出しても昔のようには儲からない。
しかし、一国一城の主となるとそれ相応の人間としての経験値を稼ぐことができる。
 
そして現代は、城を持つのがすべてではない。
 
独立をせず、組織に属して自分を表現するという選択肢もある。
福利厚生も充実した美容室が増えてきた。
 
そんな僕も2003年10月16日木曜日、最初のお店『Hair × Make gg (ヘアー バイ メイク ジジ) 』をオープンすることができた。
 
当時32歳で、業界では少し遅めのデビューとなる。
 
富士宮美容室ベンチマークの第1話 再デビュー案のイメージ画像

 
スタッフのメンバー変更は、比較的に多くなく、長く席を置くスタッフが殆どだった。
そんなスタッフ達はまっすぐ育ち、青年だった彼らが立派な大人に成長してくれた。
 
今まで、僕ひとりだけがプレイヤー(技術者)だったのが、スタッフが成長し、みんながプレイヤーになった。
 
ggは単色弁当から幕の内弁当になったのだ。
いわゆる色々な味(プレイヤー)が楽しめるようなお店となった。
 
晴れてプレイヤーとなった若いスタッフたち。
自分の年齢に近い若いお客さまから支持をいただけるようになると、お店の客層はぐっと若くなった。
 
僕のお客さまは、いわゆる大人のお客さまがほとんどだ。
けして広い店内ではない空間に溢れる若いお客さま。。。
 
落ち着いた、そして癒し系サロンとしてスタートを切ったggは、落ち着いた癒し系サロンというより、数年間でにぎやかで元気のあるお店になった。
 
例えるなら、落ち着いた雰囲気のある穴場的なカフェが、イキの良い居酒屋さんに様変わりした。
 
活気のあるお店は、もちろん悪くない。
僕もそんなお店は大好きだ。
しかしお客さまは、いつもの日常から離れ、身も心も和みに来店され方がほとんど。
僕の馴染みのお客さまからは、「場の違う」お店になってしまった。
 
落ち着いた癒し空間が好きだったご常連さんは、そんな居酒屋さんでの若者のノリ満載の店内に、「大人世代の私」はココに居ていいのかと気まずさと居づらさを覚え始める。
そんな雰囲気を感じさせてしまっていた。
 
スタッフたちが、辞めずにずっといてくれて、成長し一人前になり、自分のお客さまを担当できるようになる。
経営者として、とても嬉しいことだ。
 
しかし僕は美容師として、自分の大切な大切なお客さまが、店内でくつろぐどころか苦痛に感じてしまうとなると、それはまた別の意味になると思っていた。
 
『わたし、いつまでこのお店に来ていいのかな... 』
 
1ヶ月悩んで、答えは出た。
 
出よう。
スタッフへ完全に渡して、僕はggを出よう。
 
僕が担当させていただいている、ご常連さんたちを新店舗にご招待しよう。
 
そして、これからご縁をいただく未来のお客さまのためのサロンを創ろう。
 
2018年 5月下旬。
そう決心した僕だった。